平成25年1月吉日
石川県弓道連盟会長
水橋 美喜夫
年頭にあたって想い巡らせたこと
明けましておめでとうございます。
連盟会員の皆様およびご家族の皆様には、お健やかに新年をお迎えの事とお慶び申し上げます。
干支では「癸巳」にあたり、永い冬眠(因習)から覚醒(脱皮)し、積極的・弾力的に物事を推進する年だそうです。
そこで、年頭にあたっての抱負について少し触れます。一言で言えば「温故知新」です。論語為政編の言葉ですが、特に「温」の語はたずねるとも、あたためるとも読みます。専門家の解説では「温」は何度も何度も重ねて習い、充分に習熟するところまで学び続け、研究することとあります。先哲の教えや伝統を謙虚に大切に学び、また、新しい時流も読み取りながら適切に取捨選択を行う、特に人の師たる者は、「温故」にも「知新」にも偏ってはいけないという教えです。弓道においては、何を守り、何を捨て去り、どのように継承発展すべきでしょうか。そのあたりをもう一度ジックリと考えてみたい。また、ゆとりがあれば、加賀藩の弓の歴史の探求も再開し、さらには、2年後に迫った新幹線開通に向けての賑わいづくりへの弓道の貢献策について、ぜひとも皆様のお知恵を拝借したい。
平成も早や四半世紀が経過しました。この元号の「平成」の典拠は、「史記」五帝本紀の「内平外成(内平かに外成る)」と、「書経」大禹謨の「地平天成(地平かに天成る)」から採り、「内外、天地とも平和が達成される」という意味です。そこに込められた願いとは裏腹に、わが国では未曽有の大震災あり、原発事故に伴う放射能汚染あり、領土をめぐる紛争が急浮上し、一国の宰相も比較的短命に終わるなど、内憂外患や試練の連続と言えば言い過ぎでしょうか。こうした時だからこそ、やはり明るい話題に目を向けましょう。
ご承知のとおり、昨年から新年にかけて、我が石川県弓連では全国大会での入賞が相次ぎました。大変嬉しく、健闘された選手の皆様には敬意と感謝を表する次第です。
もちろんこれに満足することなく、さらに飛躍向上するよう、願ってやみません。また、ニューフェースの出現も大いに期待するところです。先日の県連祝賀会も老壮青のバランスがとれた幅広い会員のご参加を得て開催されましたが、ますますの発展を祈念するとともに先輩の先生方には体調管理をぜひお願いしたいとご挨拶申し上げました。
次に、明るい話題になることを期待して紹介しますが、昨年末に急きょ開催された全国地連会長会議では、公益法人としての今後の方針をまとめた改革大綱(案)が初めて示されました。しかし、内容が斬新すぎる事や事前の検討時間の不足などで、会議の冒頭から口角泡を飛ばしての議論が一日続きました。メンバーの殆どが範士で、新米地連会長の私などはたじたじとなるハイレベルな会議でした。一方的な、シャンシャン会議ではなく、各々が愛する日本弓道の行く末を憂慮しての熱い議論が続き、結論には至りませんでしたが、この熱意が集約に向かい、近いうちに明るい方向性が見出せるものと信じているところです。
さらに身近な話題として、いつも一緒に練習している弓道仲間のお二人がこのほどご結婚されることになりました。この寒さの中でアツアツのお二人から温かさをいただいています。心より祝福し、末永いお幸せを祈ります。
弓道は楽しく明るくなければなりません。むろん、楽しむだけの弓道など論外です。本物の弓道には内から燃えてくる熱さがあります。深みがあります。しかもシンプルです。だからこそ尽きる事のない魅力に満ち溢れています。
「芸術に完成はあり得ない。要はどこまで大きく未完成で終わるかである。」と喝破した老境の画聖の言葉に触れて私の心の奥にも小さな明かりが灯されました。
平成24年5月吉日
石川県弓道連盟会長
水橋 美喜夫
県連新会長に就任して(抱負など)
先般の理事会で皆様の推挙をいただき、県連会長の要職を拝命いたしました。もとより浅学非才そのもので不慣れな事ばかりですが、どうぞよろしくお願いします。
新会長としてこれからどこに舵を向けるのか、考え方を示してほしいという要望もございましたので、以下、少し長文になりますがご容赦願い、思うところを書いてみたいと思います。
1 全日本弓道連盟の新体制と県連の関係について
昨年11月1日付けをもって、これまでの「財団法人全日本弓道連盟」が新しく「公益財団法人全日本弓道連盟」(以下「全弓連」と言う。)に移行しました。事業内容は当面急激な変更はないようですが、組織上は旧組織の廃止と新組織の誕生になります。
今後、新生の全弓連は、「公益」事業という一本道を邁進することになります。つまり、誤解を恐れずに分かりやすく言うなら、仲良しグループだけで和気藹々とし、関係者以外には理解困難というような事業活動は認められなくなります。
今、具体的に示されているのは、@従来の講習会の見直しと若手対象講習会の新設、A連合審査及び地連審査の審査員の事前登録制、B中学校への武道必修化への導入支援、C機関誌「弓道」の誌面拡大、D会員からの意見募集などですが、会長も交代されましたので、どんどん目新しい公益事業案が示されるのではないでしょうか。
我が石川県弓道連盟は、新生公益法人に対する県では唯一の加盟団体となりますので、おのずと全弓連の趣旨・目的に適った活動を目指す必要があります。「公益」には説明責任と理解の深まりが求められます。場合によっては地連から全弓連への提言も必要になることもあるかと思います。
加えて、北陸三県や北信越五県の弓道連盟との連携や絆をこれまで以上に深めていきたいと考えています。
「この世に生き残る生物は、最も強いものではなく、最も知性の高いものでもなく、最も変化に対応できるものである」という言葉もありますが、変えてはいけないものと変えなければならないものを正確に峻別しながら、歩を進めなければと思います。そこに通底するものは「至誠と礼節」であり、「人間完成への道」です。
会員の皆様には、こうした認識を踏まえて今後の県連の事業計画樹立や事業の推進にご協力をいただきたく、よろしくお願いします。
2 石川県弓道連盟の運営方針について
上記とも関連性がありますが、先の理事会で県連規約の一部改正が承認され、「評議員」制度を導入しました。一般論で言えば、理事(常任理事含む)は組織においては執行部(責任者)側であり、評議員はその理事の活動全体を監督し、最高議決機関となる権限を持つ立場になります。そういう仕組みで相互牽制が今以上に働き、惰性に流されず、また、会員のみならず弓道に関わりのない一般県民も取り込んでの事業運営にもチャレンジし、組織の活性化が図られるよう期待します。
事業計画の詳細は各専門部が主導していくわけですが、目標とすべき大きな柱を示すならば次のとおりだと考えています。
(1)弓道の普及振興…講習会、研修会、審査会、学校弓道との連携など
(2)弓道連盟会員の増…初心者教室、県民の弓道体験会、広報、Uターン者への勧誘など
(3)弓道競技力の向上…強化練習、国民体育大会を始めとする全国レベルの大会入賞など
これらは、県連規約の第2条及び第3条に掲げられている項目でもあり、また、故山崎元会長が提唱したいわゆる三本柱と軌を一にしますが、これらを掲げた以上はその実現に向けて具体策を会員の皆様と一緒に練り上げる必要があります。
さらにあえて加えるならば、危機管理意識(安全管理)の醸成でしょうか。これは、単に危険防止という観点にとどまらず、環境面、健康面、精神面での安全・安心の確保です。
そのために重要な事は、@会員の知恵の結集、A会員全体の認識の共有化、B会員への情報提供であり、そのすべての共通土台となるのが会員と役員との「風通し」だと考えています。
個人的に実施したいと考えているのは、各専門部との話し合いです。専門部として抱えている課題や日頃の意見などを忌憚なく披露してもらい、それらを集約して対応策を役員等で検討していきたいと思っています。もちろん、高体連や中体連との協議も含みます。
また、これに関連しますが、来年度予算の編成に向けて理由や積算を示していただければ、重点配分などの支援を検討していきたいと考えています。
永く、石川県は弓道の谷間の県だと言われ続け、近年になってようやくそういう劣等感から脱してきた気がしています。聞くところによれば、今般勇退された鈴木三成全弓連会長は、他県の講習会での挨拶で「石川県弓連は急成長してきた。皆も石川県弓連を見習うように。」とおっしゃっていたそうです。
それは取りも直さず歴代会長を始めとする幹部役員の尽力やそれを支持してきた会員全体の先見の明であり、功績でもあります。
これに満足することなく、さらに時代を先取りするための布石を、新しい年度の事業計画に取り込むとともに、笑顔が絶えない弓道界を目指したいと思いますので、新しい役員体制に対して会員の皆様の忌憚のないご意見とお力添えをいただきたく、どうぞよろしくお願いします。
3 キャッチフレーズなど
「三本柱」の方針と並んで、分かりやすいキャッチコピーがないか考えてみました。個人的な思いつきで恐縮ですが、チーム『 いしかわ 』!の弓道 というのは如何でしょうか。
意味を簡単に解説すると次の通りです。
「い」……石川らしさ、一流、居心地の良さ、一枚岩(一致団結)、射よや射よ
「し」……射品・射格の向上、至誠、真善美、示範、情報共有、尽不求、進取
「か」……風通しの良さ、活性化、会員の増強、感動
「わ」……和、輪、笑いが絶えない、ワクワク
石川県弓道連盟として目指すべき方向を表現する言葉を羅列しました。
「いしかわ」を言葉の頭文字として、県連全体が一つのチームとなって力強く進む意志を表しています。参考にしてもらえれば幸いです。