『平成30年 年頭所感 「只管打射」』

平成30年1月吉日   
石川県弓道連盟会長   
   水橋 美喜夫   
 戊戌(つちのえいぬ)の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。ここ数年は降雪が少ない年が続きましたが、今回は不意打ちのように繰り返す大雪に見舞われました。関東でも大雪で大混乱し、私も少し影響をうけたところですが、会員の皆様は如何でしょうか。
 さて、お陰様で本県連盟が進めてきた創立70周年記念のプロジェクト事業は大詰めを迎えています。
 「記念誌の発刊」は当初予定のページ数を大幅に超え、2年余の手間をかけて配付直前にこぎつけています。この大変貴重な書籍をぜひとも多くの方々に購入いただきますようお願いします。さらに「記念式典・講演会・祝賀会の開催」についても直前に迫りました。多数の皆様のご参加をいただき、節目の式典を祝福いただきますようお願いいたします。
 併せて、「県連盟旗の新調」に向けてデザイン募集の結果、すばらしい旗が出来上がりました。今後は国体等の応援時のみならず、諸事業等で掲示するなどで活用させていただきます。
 残る「全日本弓道遠的選手権大会の開催(招致)」についても、全弓連の正式承認をいただき、本年10月の大会開催に向けて着々と準備が進んでいます。参加される全国の選手の皆さん等に最高のおもてなしができるように万全を期すこととしておりますが、運営に関わっていただく会員の皆さんには改めて競技規則や運営要領等を熟知いただき、リハーサルを重ねるなかで精度をあげていきたいと思います。また、この他の会員の皆さんには、これを機会に全国から選抜されたトップ選手の技の観戦と応援をいただきたいと思います。
 一方、(公財)全日本弓道連盟から様々な通知が届いています。このうち「公認資格認定講習会」の開催と、これに関連する(公財)日本体育協会の「公認スポーツ指導員養成講習会」について、本県連ではいち早く実施したところです。このほか、冬季においては和服の下に弓道衣の着用を奨励する(ほぼ義務的です)こと、各種ハラスメントの根絶、アンチドーピング、個人撮影の画像や動画で本人の承認のないものの投稿等の禁止など、矢継ぎ早な連絡がなされています。私も全弓連の理事という立場にあって、これまで以上に弓道の公平・公正・公明な事業の徹底に向けて邁進したいと思います。
 振り返れば、私自身も弓道に入門して40数年を経過し、また、平成の時代も幕を閉じようとしています。最近、ここまで弓道にのめり込んだのは何故だろうかと時々考えるようになりました。弓道の特長はたくさんありますが、一言で言えば「奥の深さ」なのかなと思います。スポーツとしての楽しさと求道面を併せ持ち、日本文化を伝承しつつ、一方では人体の骨格・筋肉・神経・呼吸・脳・心理などを含む「人間そのもの」の探求の面白さがあります。併せて、幅広い年齢層の同好の士と知り合い、絆が深まることも慶びです。
 そこで、新年にあたり思うのは、理屈を抜きにして、今日も一射一射、丹念に弓を引きたいという事です。道元の言葉に「只管打坐」があります。その意味を繙くと、余念を交えず、ただひたすら座禅をする、成りきる、そこから身体も心もまっすぐになる、無心無我の状態、さとりを求めるものではない、等々とあります。この言葉をいただいて、標題の「只管打射」という言葉を考えました。的中至上主義をとらない弓道、至誠と礼節を求める弓道、自己に克ち人間完成を目指す弓道、これは難問中の難問です。そういう解決策をむしろ考えずにひたすら弓を引くことで何かが見えてくるのではないか、それはなかなか手ごわいですが、挑戦しがいもあります。