令和2年 年頭所感
 『百不当の一老と一箭一仏の境地を』

令和2年1月吉日   
石川県弓道連盟会長   
   水橋 美喜夫   
                                                         
 県連会員の皆様、明けましておめでとうございます。
「令和」という万葉集由来の美しい年号の時代が始まりました。
 西暦2020年、「庚子(かのえ・ね」の新年にあたり、皆様には幸多き素晴らしい年となりますようお祈りいたします。
 昨年は県連に特段に大きな収穫がありました。「いばらき国体」での男女3種別6種目すべての入賞、全日本弓道遠的選手権大会での出場選手4名全員の予選通過と3名の入賞、さらに審査では2名の七段位を始めとする称号・段位の合格者の続出などです。こうした成果に包まれて会長と言う役職に就いていることは誇らしく、また身も心も一層引き締る感覚です。
「ワンチーム」は昨年の流行語大賞ですが、まさに「ワンチーム石川」です。
 改めて県連の4目標を振り返ると、
 @弓道の普及・振興では審査合格者が着実に増加しており、教士七段の数が教士六段を上回っていると言う快挙です。
 A会員の増では、少子高齢化の時代といえ、ここ10年では3番目に多い登録会員となっています。
 B競技力向上では前記のとおり、素晴らしい成績を残していただきました。
 C安心・安全面では、台風大被害も受けず、弓道関係での事故等の発生もなく、平穏に経過していることに感謝しています。
 一方、時代はダイナミックに動いています。全弓連の改革によって昨年8月には理事構成メンバーが大きく入れ替わりました。新しい委員会等が組織され、斬新な視点や大胆な発想に基づく事業の展開が予想されています。さらに、今年はオリンピックイヤーですが、弓道も何らかの役割や関連性があることを期待しています。
 さて、昨年ノーベル化学賞を受賞された吉野彰氏は「失敗しないと成功はない」と言われました。彼の笑顔を絶やさない人柄と併せてこの言葉には重みを感じました。
 弓道における「成功の射」とは何でしょうか。単に的に的中した場合は「成功の射」でしょうか。少し矛盾に感じますが、弓道は的中至上主義ではありません。しかし「正射必中」とも言います。私は、各自の修練の段階に鑑みて限界ギリギリでの一生懸命の射、入場から退場までを観た人に大きな感動を与える射、その両方が最低限の成功の射の条件だと思います。
 日頃の千射万箭の一射一射に、弓矢が自分を高めてくれる道を無言で教えてくれています。目の前の大会や審査での成果を追い求めるのではなく、(膨大な量の)失敗という薄皮を一枚一枚(重ねていくのではなく)剥がしていく努力と工夫を重ねる末に成功の射の片鱗が見えてくる、それが修練であり、人間を高める道の本質だと思います。 
 私の好きな言葉の「百不当の一老」も、これに近い意味だと思います。一射を無駄にせず、ひたすら念ずれば一箭に大小の一仏が生ずる、ぜひともそんな境地を体験してみたいと切望するこの頃です。
 会員の皆様方には本年も県連の一層の発展のために格別のご支援をお願いし、感謝の心を忘れず、チーム一丸、共に明るく楽しく豊かな弓道人生となるよう念じて年頭の挨拶といたします。